演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

胃癌における機能温存手術

演題番号 : OS4-1

[筆頭演者]
鈴木 知志:1 
[共同演者]
金治 新悟:1、中村 哲:1、山本 将士:1、金光 聖哲:1、山下 公大:1、今西 達也:1、角 泰雄:1、田中 賢一:1、掛地 吉弘:1

1:神戸大学大学院食道胃腸外科

 

胃癌に対する定型手術は、胃の2/3以上切除とD2リンパ節郭清であり、早期胃癌に対しても同様に行われてきた。根治性は十分であるものの、胃癌切除症例の約半数を早期癌が占めようになり、胃切除後障害によるquality of life (QOL)の低下が鑑みられ、根治性のみを追求した画一的な郭清を見直し、機能の温存を配慮した術式が注目されるようになった。胃切除範囲やリンパ節の郭清範囲の至適化により癌の根治性と機能温存の両立を図った非定型手術(合理的縮小手術)が、「胃癌治療ガイドライン」においてもリンパ節転移を伴わない早期胃癌に対して容認されている。胃癌手術では幽門および迷走神経などの自律神経が温存の対象となる。
噴門側胃切除術は、胃上部に限局した腫瘍で1/2以上の胃を温存できるものが適応となる。胃全摘術では8.2%に認められるダンピング症候群が幽門機能の温存により0%に防止される一方で、食道残胃吻合では胃部膨満感が16.3% と胃全摘術の2.5%と比べて高いとの報告もあるが、当科で現在までに施行した胃管作製による再建では排出障害は認めていない。また、噴門の喪失による逆流性食道炎の発生はQOLの著明な低下を招くため、空腸(嚢)間置や噴門形成を付加して貯留能の代用や逆流の防止を図る機能を再建する術式も試みられている。噴門を温存する幽門保存胃切除術は、胃中部の腫瘍で遠位側縁が幽門から4cm以上離れている場合に適応となる。本術式は幽門機能の温存に加えて、胃酸分泌領域の温存による消化吸収能の維持により体重減少が少なく、術後1年で94%までの回復が報告されている。
リンパ節郭清範囲の縮小については、すでに乳癌、悪性黒色腫の治療で実用化されているsentinel node navigation surgery (SNNS)の胃癌手術への応用が検討されている。SNNS研究会による多施設共同研究では、腫瘍径4cm以下のcT1N0M0あるいはcT2N0M0症例ではSN同定率97.5%、リンパ節転移検出率93%、正診率99%と良好な結果が得られた。胃癌におけるsentinel node conceptの成立が示されれば、予防的リンパ節郭清領域の省略と胃切除範囲の縮小も可能となり、個別化治療につながることも期待される。
腹腔鏡手術など新しい技術の発展に伴い、胃癌に対する機能温存手術は、いっそう注目されてきている。今後、標準化には胃切後障害やQOLに関する共通の評価法の確立と臨床試験による有用性、安全性の検証が求められる。

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