演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

脳転移:脳外科の視点から

演題番号 : OS12-6

[筆頭演者]
中洲 庸子:1 

1:静岡県立静岡がんセンター脳神経外科

 

脳転移の罹患者数は年間数万人以上と推計され、症候性のものに限っても、がん患者の8~10%に発生するとされている。がんの集学的治療の目覚ましい進歩を背景に、脳転移が重要な臨床課題となっている。脳転移の画像診断が進歩し、治療の選択肢が増えている中、脳外科の低侵襲手術と手術支援器機の進歩を活かした外科治療の適応があらためて注目されている。
 これまで脳転移の治療は、ステージIVのがん患者に対する緩和的治療と捉えられ、延命とQOL確保を目的としてきた。しかし、特定の患者において治癒を目指す道も開拓されつつある。また、歴史的に脳転移の大きさと個数を拠り所として適応判断と治療効果判定研究が行われてきたが、最近では治療適応判断をより個別化すべきと考えられるようになった。
 従って、外科的な介入の適否は多くの因子を総合的に評価して判断する必要がある。主な因子として、(1)個々の腫瘍の因子:大きさ、増大スピードと生命・機能への影響、解剖学的に到達可能な部位か、小脳病変か、放射線治療の既往、嚢胞性か、原発不明か。(2)宿主の因子:全身の病態と余命、全身治療の緊急性、年齢と合併症、止血凝固能。(3)中枢神経系の管理:神経学的症状、水頭症、脳浮腫、髄膜播種、抗がん剤投与ルート。(4)地域・施設の医療資源:脳外科医の習熟度、放射線・内科治療との連携などがある。
 本講演では、脳転移をはじめとして頭蓋骨転移、髄膜播種にも言及し、手技の進歩(支援器機を利用した摘出術、髄液シャント術、レザボア留置術など)を踏まえて、外科治療の適応判断の実際と注意点を解説する。また、2003~2013年に当科で摘出した182病変の病理学的検討から、高分化・低分化腫瘍において異なる周囲脳への浸潤態度、定位放射線治療後の組織における壊死と再発の混在、および周囲くも膜への浸潤などの病理学的特徴を報告する。さらに、日本脳腫瘍学会ガイドライン委員会で新しい転移性脳腫瘍ガイドラインの分担執筆を担当した経験から、外科的治療を含めた集学的治療の未来を概観する。

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