演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

脳転移に対する放射線治療の役割~長期制御と安全性を目指して

演題番号 : OS12-5

[筆頭演者]
大屋 夏生:1 

1:熊本大学大学院生命科学研究部放射線治療医学分野

 

転移性脳腫瘍に対する放射線治療の目的は、肉眼的転移巣の縮小による神経症状の軽減と、潜在的病巣の顕在化抑制である。前者には、転移巣局所に十分な線量を照射することが必要で、ガンマナイフまたはリニアックベースSRS、および分割定位照射SRTが主体となる。後者には、脳実質全体を一定線量でカバーすることが求められ、全脳照射が適用される。これらをどのように使い分けるか、併用するか、あるいは再発時の救済に温存しておくかについては、標準的な方針は確立していないのが現状である。
一方で、近年の化学療法、分子標的治療などの全身療法の進歩に伴い、過去には局所治療の対象になる前に癌死していたと思われる症例も、一定の確率で長期生存が期待できるようになった。このような時代を見据えて、脳転移に対する放射線治療も、より長期間の効果維持と晩発毒性の軽減を重視する方向へ展開する必要がある。
脳転移の放射線治療の目標を、症状緩和に限定せず、長期の頭蓋内制御とBrain death の回避に据えた場合、根治的放射線治療に準じたアプローチ、すなわち、(1) 病巣に高線量を照射する(局所制御力向上)、(2) 病巣辺縁の線量低下を避ける(辺縁再発予防)、(3) 潜在的病巣を予防的に照射する(頭蓋内制御)が必要である。(1) については、大きい病巣や形状が複雑な場合は、数回に線量分割することで、より安全に高線量を照射可能である。(2) については、照射体積を腫瘍辺縁から十分なマージンをとって照射し、線量分布の均一性を維持することで達成できる。(3) は初回治療からの全脳照射の積極的併用が該当する。このような頭蓋内長期制御を目指した治療は、頭蓋外病変の治療に専念する時間の確保や、医療資源の有効利用という観点からも、メリットが期待される。
長期制御を目的とした治療は、純粋な緩和照射と異なり、晩発毒性のリスクを常に念頭に置かなければならない。近年、特に全脳照射後の認知機能低下が再評価されており、それを背景として、IMRTを用いた海馬の選択的線量減少が試みられている。長期予後も視野にいれる時代であるからこそ、安易に全脳照射を選択肢から除外するのではなく、治療技術を駆使し線量分割を最適化することで、晩発毒性の軽減を目指していくことが望まれる。準根治的アプローチには、適切な予後予測にもとづく症例のセレクションが重要であり、綿密な診療科間の連携が不可欠と考えられる。

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