演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第52回・2014年・横浜
 

内分泌療法耐性克服に向けて -分子標的薬との併用について

演題番号 : OS11-4

[筆頭演者]
山下 啓子:1 

1:北海道大学病院乳腺外科

 

エストロゲンレセプター(ER)陽性乳癌は原則、エストロゲン依存性に増殖・進展するため、内分泌療法としてエストロゲン産生を抑制する薬剤とERに結合してエストロゲンを競合阻害する薬剤が開発されている。内分泌療法耐性には、ER陽性乳癌であってもエストロゲン依存性に増殖・進展していない場合も存在するが、エストロゲン依存性が保たれている場合ではそれぞれの内分泌療法剤に固有の耐性メカニズムが存在する。さらにエストロゲン依存性に進展している場合でも、様々な遺伝子変異が生じることにより、あるいは内分泌療法などの治療を行うことにより、また宿主要因(ホルモン環境など)の変化により、癌の生物学的特性や内分泌療法耐性となるメカニズムは経過とともに変化する。
内分泌療法耐性克服に向けて、特にERとクロストークする増殖因子のシグナル伝達経路に関わる様々な因子を標的とした分子標的薬が開発中であり、内分泌療法剤と併用する臨床試験が行われている。その中で、mTOR阻害剤であるeverolimusは、第III相試験にて非ステロイド性アロマターゼ阻害剤耐性の進行再発乳癌の二次以降の内分泌療法としてステロイド性アロマターゼ阻害剤と併用することによりprogression-free survivalを有意に延長することが報告された。内分泌療法耐性克服を目的とした分子標的薬の開発においては、標的となる分子が癌の進展にとって重要なdriverであり予後不良因子であること、また正常細胞での働きに影響せず問題となる副作用が生じないことが望ましい。しかしながら増殖因子のシグナル伝達経路に関わる因子は正常細胞でも発現しているため副作用が問題となること、また効果予測のバイオマーカーが開発されていないため有効な患者を選択できないこと等の問題がある。さらに内分泌療法耐性となるメカニズムはすべての転移巣で均一とは限らず、ひとつの転移巣でもheterogeneityが存在して個々の細胞で異なるメカニズムの耐性が生じている可能性がある。そのため1か所の再発巣生検で得られた情報(耐性メカニズム)がすべての癌細胞に共通するとは限らない。また内分泌療法耐性のメカニズムは癌の進展や薬物療法を行うことにより変化する。このような状況が、現在、開発中の分子標的薬の効果予測マーカーの同定を困難としていると推測される。

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