一般演題(口演)
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胃全摘術後の感染性合併症危険因子の解析(サルコペニアとの相関) 演題番号 : O14-6
1:地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター消化器外科、2:横浜市立大学医学部外科治療学
【背景】サルコペニアは、筋肉の量や機能が低下した状態と定義される。加齢に伴う変化の一つだが、若年成人にも起こることが知られている。近年、サルコペニアが、肝切除・大腸癌術後合併症の重要な危険因子であると報告された。しかしながら、高齢化の進む本邦の胃癌手術において、サルコペニアが合併症の危険因子であるか否かは明らかではない。
【対象・方法】2011年6月から2013年10月に初発胃癌の診断で胃全摘術を施行した139例。全例を同一のERASプログラムで管理した。術前に、BIA法(生体電気インピーダンス)により筋肉量を、握力計により筋力を測定した。筋肉量は身長の2乗で除した値(kg/m2)を骨格筋量指標(SMI)と定義した。筋力、SMIのカットオフ値を性別毎下位20%値とした。感染性合併症をWBC10000以上または体温38℃以上、抗生剤投与を要する症例と定義し,Clavien-Dindo分類で評価し、Grade2以上を合併症ありと定義した。術前の握力・SMI低下及び患者・手術因子が感染性合併症の危険因子となるか否かを単変量/多変量ロジスティック回帰分析により検討した。 【結果】139例の平均年齢は66.5歳、男:女=98:41。手術アプローチは開腹105例、腹腔鏡34例で、脾臓合併切除は63例に施行された。手術時間中央値は273分(116-579分)。出血量中央値は260 ml (10-2390ml)であった。 Grade2以上の感染性合併症は26例(18.7%)に認めた。縫合不全10例(7.2%)、膵液漏5例(3.6%)、肺炎4例(2.9%)、イレウス4例(2.9%)、腹腔内膿瘍1例(0.7%)、膵炎1例(0.7%)、リンパ漏1例(0.7%)であった。感染性合併症危険因子の単変量解析では、男性、SMI低下、筋力低下が有意な危険因子となった。多変量解析では、男性(HR 3.979, 1.094-14.468, p=0.036)、筋力低下(HR 2.865, 1.014-8.130, p=0.047)が独立した危険因子として選択された。 【結語】胃癌に対する胃全摘症例では、術前の筋力測定によるサルコペニアの評価が、術後感染性合併症リスクの評価に重要である可能性が示唆された。 |
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