演題抄録

ミニシンポジウム

開催概要
開催回
第54回・2016年・横浜
 

リンチ症候群による腎盂・尿管癌患者の有病率の推定およびその臨床病理学的特徴の検討

演題番号 : MS3-5

[筆頭演者]
浦上 慎司:1 
[共同演者]
井下 尚子:2、新井 正美:3、美山 優:2、黒澤 和宏:1、阪口 和滋:1、永本 将一:1、岡 優:1、岡根谷 利一:1

1:国家公務員共済組合連合会虎の門病院・泌尿器科、2:国家公務員共済組合連合会虎の門病院・病理部、3:公益財団法人がん研究会有明病院・遺伝子診療部

 

目的)リンチ症候群は、ミスマッチ修復関連遺伝子の生殖細胞系列変異を原因として、ミスマッチ修復機構が損なわれ、様々な悪性腫瘍が発生する常染色体優性遺伝性疾患である。リンチ症候群の関連癌として大腸癌、子宮内膜癌、腎盂・尿管癌などがあげられている。全大腸癌の2-3%がリンチ症候群と考えられており、その大腸癌の特徴については詳細な検討がなされている。一方リンチ症候群における腎盂・尿管癌の臨床病理学的特徴については知られておらず、今回これらについて検討する。
対象と方法)当院で手術され腎盂・尿管癌と診断された患者に対して、診療録より改訂ベセスダ基準に基づき、リンチ症候群の第1次スクリーニングを試みた。さらに第1次スクリーニングに関係なく、摘除組織内の腫瘍組織と正常組織を用い、リンチ症候群の原因遺伝子であるMLH1, MSH2, MSH6, PMS2の蛋白発現を免疫組織学的染色にて評価した。
結果)2006年から2014年の間に腎尿管全摘を施行された142例の腎盂・尿管癌を対象とした。改訂ベセスダ基準を満たした症例は20%あった。MLH1,MSH2,MSH6,PMS2 の4つのミスマッチ修復タンパクの免疫染色結果より、リンチ症候群を背景とする腎盂・尿管癌の有病率は5%(6例)と推定された。年齢の中央値は71歳。3/6症例は、腎盂・尿管癌が高齢で初発として発生しており、改訂ベセスダ基準を満たしていなかった。その他の臨床的特徴としては女性5/6例・尿管5/6例・低悪性度6/6例・低浸潤度6/6例が多く、MSH2/6欠失パターンを4/6例に認めた。病理学的には内反性乳頭腫に類似した異型の弱い尿路上皮癌が4/6例、茎の細い、丈の高いvillousな乳頭状尿路上皮癌が4/6例にみられ、これらがリンチ症候群を背景とする腎盂・尿管癌の特徴的な組織型と思われた。同意が得られた1人に遺伝学的検査が施行され、MSH2遺伝子のexon1-6の欠失を認めた。
考察)リンチ症候群を背景とする腎盂・尿管癌患者の有病率は5%前後と推定され、女性・尿管に多かった。半分の症例は改訂ベセスダ基準を満たしておらず、腎盂・尿管癌においてはベセスダ基準による一次スクリーニングは適切ではないと考えられた。また病理学的には低悪性度・低浸潤度でリンチ症候群を背景とする腎盂・尿管癌に特徴的な組織型が判明した。これらは、今後リンチ症候群を背景とする腎盂・尿管癌に対する診断や有効な治療法の確立につながる可能性がある。

キーワード

臓器別:腎・尿路・膀胱

手法別:診断

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