演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第53回・2015年・京都
 

食道癌のエピゲノム解析と治療個別化への展望

演題番号 : OS2-3

[筆頭演者]
山下 継史:1 
[共同演者]
牛久 秀樹:1、森谷 宏光:1、細田 桂:1、三重野 浩朗:1、江間 玲:1、片田 夏也:1、渡邊 昌彦:1

1:北里大学東病院外科

 

(背景)われわれは、食道扁平上皮癌における癌特異的メチル化遺伝子を同定するために pharmacological unmasking法を開発した (Yamashita K, et al. Cancer Cell 2002)。これまでに新規遺伝子を独自に同定し、機能解析・臨床的意義の検討を行うことによって食道扁平上皮癌の疾患の理解を深め、新たなる治療法の開発を目指したトランスレーショナルリサーチを展開している。
(結果)(1)独自にかつ新規に同定した癌特異的メチル化遺伝子として PGP9.5、NMDAR2B、NEFH2、HOPX、CDO1等があり、原発食道癌でのメチル化頻度は40~80%であった。マイクロダイセクションを用いた同一腫瘍内でのメチル化レベルの検討では、heterogeneityは見られなかった。このことは遺伝子発現を用いた診断と比較して生検におけるメチル化診断の再現性を担保する。(2)癌特異的メチル化遺伝子はいずれも癌抑制遺伝子機能を有し、癌の進展・予後に影響する可能性が示唆された。anchorage independent growth、apoptosis、invasion 能に大きな影響を与えることを証明した。(3)PGP9.5、NMDAR2B、NEFH2は p53/PI3 kinase 経路に収束し癌抑制機能を発揮し、HOPXは EphA2/PI3 kinase経路の抑制に関与する。CDO1は ROSの発生に関わることでそれぞれ癌抑制的に作用する。また、これらの遺伝子のメチル化異常は予後不良な癌で高頻度に起こることが示された。(4)CDO1遺伝子は癌特異性が高く、微量癌細胞診断における癌診断マーカーとして有用であった。術前化学療法を受けた食道扁平上皮癌において Grade2/3の症例では Grade 0/1に比較してメチル化が有意に低かった。このことは、術前治療の効果判定にCDO1メチル化が有用な可能性を示している。また、HOPXと CDO1メチル化異常は血液中での癌検出にも用いることが可能であった。
(結語)DNAメチル化異常を用いた癌のトランスレーショナルリサーチの可能性について述べる。DNAメチル化異常は食道扁平上皮癌の悪性度予測因子として使用できるのみならず、高悪性度癌の治療戦略を講じる重要な情報と考えられた。また、その高い癌特異性を用いて生検検体等を用いた術前治療の効果判定にも用いることができる可能性がある。今後は、メチル化遺伝子を用いた最新治療 (DCF induction治療)での治療効果判定を含めた診断意義について検討を加えている。

前へ戻る