演題抄録

口演

開催概要
開催回
第59回・2021年・横浜
 

優秀演題
がん経験者の性生活への影響とセクシュアリティ支援ニーズの実態調査

演題番号 : O80-2

[筆頭演者]
渡邊 知映:1 
[共同演者]
池田 明香:2、梅田 恵:2

1:昭和大学・保健医療学部、2:認定NPO法人 キャンサーネットジャパン

 

【目的】がん経験者のセクシュアリティ支援プログラム開発の前調査として、がん治療やがんの進行に伴う性生活への影響と支援における課題を明らかにすることを目的にがん経験者を対象に実態調査を行った。
【方法】2021年に認定NPO法人キャンサーネットジャパンのML登録者を対象にWEB調査を行った。主な調査項目は、がん治療後の性生活の変化と性機能障害の有無とその内容、性に関する相談経験の有無と支援に関するニーズとした。
【結果】470名(男性156名、女性314名)のがん経験者より有効回答を得た。回答者のがん種は乳がん36.2%、造血器腫瘍23.6%を占めていた。現在の性生活にとてももしくは満足していると回答者は24.4%に留まっていた。がん治療後の性生活の頻度の変化は、がん治療前に月1回以上性生活があったうちの48.9%(男性55.6%,女性45.7%)は性生活が全くない状況にあった。調査時に月1回以上の性生活のある238名のうち、85名(35.7%)が性欲の低下を感じており、有意な性差は認められなかった。また、女性では性交疼痛が27.2%、男性の29.0%に勃起障害が認められた。性生活への抵抗感として頻度の多いものは、全体では「性的な気持ちになれない」17.0%、性別で有意な差がみられた意見は、女性では「治療後の身体の変化を見られたくない」17.2% (p<0.001)が、男性では「体力がない」13.5% (p=0.002)が多い傾向がみられた。「性行為による感染症・病気への影響が怖い」と回答したものは5.7%であった。これらの抵抗感にAYA世代かどうかの年齢による差はみられなかった。セクシュアリティに関して「相談が誰にもできなかった」と回答したのは34.9%で、8割以上が支援の不十分さを感じていた。支援の在り方については、医療者からの情報提供のみではなく、半数以上が経験者の体験談や情報共有を希望していた。具体的な支援方法については、プライバシーの保護や匿名性が確保されたWEB上での相談、医療者とあたり前に話すことができるようなコミュニケーションや治療開始前からの情報提供の必要性などの意見が多く見られた。
【考察】性生活を継続しているがん経験者の約3割で性機能への影響が生じていることが明らかになった。また、性生活への抵抗感もあり、それらの多くは相談に至らないunmet needsとなっていることが指摘された。今後は医療者のセクシュアリティに関する相談への教育やWEB上での支援ツールの開発が求められる。

キーワード

臓器別:がん看護

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