演題抄録

臓器別シンポジウム

開催概要
開催回
第51回・2013年・京都
 

高カルシウム血症と低ナトリウム血症

演題番号 : OS20-1

[筆頭演者]
宇都宮 與:1 

1:公益財団法人慈愛会 今村病院分院 血液内科

 

 悪性腫瘍では、救急医療の対象となる直接的な症候は稀ではあるが、まれに緊急治療が必要になる症候や所見がある。腫瘍が直接的に影響する上大静脈症候群、頭蓋内圧亢進症、脊髄圧迫、心タンポナーゼ、胸水貯留による呼吸不全、腸管穿孔、血栓症、代謝異常などがある。特に悪性腫瘍に伴う代謝異常では、高カルシウム(Ca)血症、低ナトリウム(Na)血症、腫瘍崩壊症候群などがあるが、前述の症候と併せてオンコロジーエマージェンシーと呼ばれている。代謝異常の中で高Ca血症は頻度が高く、肺癌、頭頸部癌、乳癌、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)などでよくみられる。悪性腫瘍に伴う高Ca血症には、乳癌や多発性骨髄腫で骨転移によって起こるlocal osteolytic hypercalcemia (LOH)、種々の癌やATLによくみられる副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTH-rP)が関与するhumoral hypercalcemia of malignancy (HHM)、悪性リンパ腫でみられることのある活性型ビタミンDの産生、頻度は低いが各種癌にみられることのある異所性副甲状腺機能亢進症の4つのタイプがある。特に、ATLでの高カルシウム血症は高頻度で、程度も強いことが知られている。当院では過去1年間で血清Caを測定した16883件中10.3mg/dl以上の高Ca血症は、553件(3.3%)にみられた。臨床的に問題となる14.0mg/dl以上の高Ca血症は、2008年5名(血液患者3名)、2009年8名(うち5名)、2010年7名(うち4名)、2011年12名(うち5名)、2012年7名(うち5名)であった。これらのうち血液疾患患者は、すべてATL患者であった。ATL患者での高Ca血症は程度も強く、ATLの病勢を反映していた。一方、低Na血症は、薬剤に起因するものが多いが、悪性腫瘍との関連では抗利尿ホルモン(ADH)分泌不適症候群(SIADH)が最もよく知られている。SIADHは胸郭内に異常、頭蓋内に異常、その他の原因によるものがあるが、炎症・腫瘍・出血・外傷などによって起こる。特に、腫瘍細胞がADHを分泌する肺小細胞癌が有名であるが、適切な診断と原疾患の治療が基本である。 本シンポジウムでは、オンコロジーエマージェンシーの代謝異常のうち、特にATLに合併頻度の高い高Ca血症を中心にそのメカニズム、治療などについて詳しく述べる。

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